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総務省、2030年を見据えた「デジタルインフラ整備計画」を発表 5G人口カバー率99%を目指す

 総務省は、2030年頃を見据え、必要となるデジタルインフラの整備方針と具体的な推進策をまとめ、一体的・効率的な整備を進めるための「デジタルインフラ整備計画2030」を策定・公表した。

 総務省ではこれまでも、デジタル田園都市国家構想の実現に向け、光ファイバー、5G、データセンター、海底ケーブルなどの基盤整備を進める「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」を策定し、取り組んできた。

 一方、地域や社会の課題が多様化・複雑化するなか、成長力を維持するには、生成AIなどデジタル技術の活用によるDXの加速が不可欠であり、それを支えるデジタルインフラの重要性も一層高まっている。さらに、災害対策としてサイバーセキュリティを含む通信インフラの強靱化も求められ、分野横断的な取り組みが必要とされている。

 こうした課題に対応するため、総務省は「デジタルインフラ整備計画2030」を策定。たとえば、生成AIや新たなデジタル技術の活用を支えるネットワーク整備として、モバイルネットワークの高度化を推進する。

 2023年度末時点で5Gの人口カバー率は全国98.1%に達しているが、AIの普及によるトラフィック増加や非居住地域での通信確保が課題となっている。このため、2030年度末までに全国・各都道府県で5G人口カバー率を99%とし、高品質な通信サービスの普及を目指す。あわせて、利用者が高周波数帯(サブ6・ミリ波)の5Gを認識しやすいよう、2025年度下期以降に発売するスマートフォンから「5G+」表示を順次導入する計画。インフラシェアリングの活用も含めて、事業者のインフラ整備促進を図るとともに、高周波数帯のユースケース創出にも務める。

 さらに、地上系ネットワークを補完する非地上系ネットワーク(NTN)の導入・普及も推進。NTNは、光ファイバーやモバイルネットワークの整備が難しい離島、海上、山間部などの非居住地域を効率的にカバーし、災害時の強靭な通信手段としても期待されている。

 具体的には、衛星通信の高度化が進められており、2025年4月には、KDDIが「au Starlink DIrect」としてスマートフォンと衛星が直接通信する「衛星ダイレクト通信」の提供を始めた。

 低軌道衛星については、海外事業者が整備したインフラを用いて国内でサービスを提供しているかたち。一方で、高速大容量通信が可能なことから今後、その需要は高まるとして静止軌道衛星の活用も含めて、サービスの多様化や自律性の向上の必要性を指摘している。

 2030年ごろに、低軌道衛星による通信システムを複数提供。衛星通信インフラの高度化を進め、ユーザーがニーズに応じてサービスを選べる環境の実現を目指す。これにより、専用端末なしでも携帯圏外地域での通信が可能となる。

 また、成層圏を飛行する無人航空機に基地局機能を搭載したHAPS(High Altitude Platform Station)の国内導入も進行中。2026年を目途に早期実用化を目指し、総務省はHAPSからスマートフォンへ2GHz帯の電波を直接接続するための技術的条件を検討している。これも専用端末を必要とせず、携帯圏外地域でのサービス提供を実現する取り組みとなる。これらの実用化に向け、2025年度内に電波法関連規定の改正と必要な制度整備が行われる計画だとしている。